「あら、こんな時間だわ」。夕食のシチューの準備で。香草の束(ブーケガルニ)をつくるためにタイムをほんの2〜3本摘むはずが、もう2時間もたっています。庭仕事が楽しくて、つい時間を忘れがちな私は、家の外壁の庭からよく見える所に、大きな文字盤の時計をつけてもらいました。けれども、夢中になってしまうと少しも役に立ちません。
私のハーブの庭は今年で8年目になります。元はがけだった場所を造成した土地なので、さら地の状態からスタートしましたが、細腕(?)一つで植え込んだセイヨウボダイジュやゲッケイジュ、マートル、ニワトコにオールドローズなどの木々も、枝を広げるほどに成長しました。それまで借りていた貸農園から移植したラベンダー、ローズマリー、タイム、セイジなどもうまく根づいて、今や風格のある大株に育ち、庭中に芳香を漂わせています。
超してきて半年間は土作りに専念し、実際にハーブや草花を植え始めたのはその年の秋からでした。最初はおおまかな道をつけて、料理用やハ−ブティ−用などのテーマ別に区画をつけた、シンプルなデザインで植え込んだ庭もよい感じに育っていくのが、なんと楽しかったことでしょう。
おもしろいことに、ハーブにはそれぞれ好きな場所があります。スイートバイオレットは日当たりと水はけのよい所は苦手で、飛び散った種子は木陰で生き生きと育ちます。そのまったく逆は、ラベンダーやタイムなどの地中海沿岸地方が生まれ故郷のハーブたちです。カモミールにボリジはこぼれ種から生えた花があちこちで咲き、土地を選びません。
この春、庭をリニューアルし、れんがなどで少し形を整えましたが、変わらないのはハーブの庭の、香りに満ちたたたずまいです。小鳥がさえずり、さまざまな芳香が混ざり合って漂うこの庭は、私の足をいつも引き止めてしまうのです。
---第1回 暮らしを彩るハーブ より---
「時間を忘れるハーブの庭」
《 目次 》
・第1回 暮らしを彩るハーブ
・第2回 おすすめハーブ10種類
・第3回 ハーブの庭から1
・第4回 ハーブの庭から2
・第5回 ハーブの庭から3
・第6回 ハーブの庭から4
・第7回 ハーブのある食卓1
・第8回 ハーブのある食卓2
・第9回 ハーブのある食卓3
・第10回 ハーブのある食卓4
・第11回 ハーブ染めの魅力
・第12回 香りのクラフト
・第13回 美容と健康
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