ボンジュール プロヴァンス!
"長男が20歳になったら、夫と2人でプロヴァンスへ"
これが、子育て時代からの私の夢でした。
なにしろ年が近い3人の息子です。毎日くたくたになっても、おまじないのようにこの言葉を唱えると、まだ見ぬ南フランスの澄みきった青い空が目の前に現れ、疲れもとれるような気がしました。
プロヴァンスはハーブの故郷。それまでに読んだフランス料理の本やハーブの参考書にも、プロヴァンス産の香り草のすばらしさが、ごくあたりまえのように出てきます。ドーデの「風車小屋だより」、ミストラルの長編叙事詩「プロヴァンスの少女ーミレイユ」、村松嘉津の名著「プロヴァンス随筆」などを私は何度読み返したことでしょう。
地図を広げると、この地方は歴史と文化の宝庫で、ローマ時代の遺跡やロマネスク様式の教会、中世の古城に修道院などが点在し、ハーブの歴史の背景を雄弁に物語っています。そして、何よりも私をひきつけたのは、丘や野原にハーブたちが自生しているということでした。
降り注ぐ陽光を浴びて、実際に道端ではタイプやオレガノなどが花をつけ、なだらかな丘や山すそにはマートルが香っているのかしら?ローズマリーが地中海の波の音を聴いて育つというのは、本当かしら?
香り豊かなプロヴァンス料理の味や作り方も知りたいし、市場巡りもしてみたい……。生まれつきの好奇心と長年の憧憬が混じり合って、プロヴァンスへの想いはますます募るばかりです。
1986年7月、とうとう長い間の夢がかないました。
ありがたいことに、ハーブのご縁でその後も何度かプロヴァンスに滞在でき、私の幸運を多くの方々と分かち合いたくてこの本ができました。
さあ、あなたもご一緒に南仏プロヴァンスへどうぞ。
《 目次 》
・夢にまでみたハーブの故郷
・自然が育てた野生のバーブたち
・暮しにとけ込むハーブを訪ねて
・市場巡りのとりことなって
・見渡せばあちこちにハーブのある光景
・西洋菩提樹に想いを込めて
・プロヴァンスハーブの道をたどる
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