もしも前世というものが存在するとしたら、私は虫の生まれ変わりのような気がする。
難しいのは、何虫か特定ができないことだ。
よい機会なので、自分なりに分析してみよう。


好奇心の強い青虫
私は青い葉っぱの手触りや青臭い匂いが大好きで、1日中庭や畑にいても退屈しない。
特に初めて見る葉っぱには格別の興味を示し、必ず口にしてみたくなるくせがある。
薬臭いセイジやセロリの葉、口中がスーッとするミント、
思ったより美味しくないローズの花弁、センテッド・ゼラニュームなど、風味はさまざま・・・・・。
ハーブや野菜を植えるときに、小躍りしたいほど嬉しいのは前世が青虫の証拠ではないだろうか。


紙魚虫とともに読書三昧
本が好きで好きで、たまらない。
これは私がかつて、紙魚(しみ)虫だったのではないかと思う、キーポイントである。
「目が悪くなるからもう止しなさい」と注意されても、布団の中まで本を持ち込み、
残りのページを惜しみながら読みふけった、あの幼い日々がなつかしい。
父母の蔵書、学校や公民館の図書館、友達から借りて読んだ本は数えきれないが、
他人の本には気を使う。
いつか自分の本を身近に置いて、読書三昧の日々を送りたいもの・・・・・、と
願っていた日々が、実現している。

ところが、次々と読みふけるうちに本は書庫、書棚からあふれ出して机の上、ベッドの下、
ベッドの棚、トイレの棚、二つある大きな階段、和室、食堂のカウンターの下まで、
アミーバーのように増殖を続けている。
捨てようとして決心し、ゴミ捨て場まで持っていっても、別の本を拾ってくるのだ。
夫に見つかると叱られるのでガレージに隠しておき、頃合を見計らって家に入れている。
紙が好きなのか、活字が好きなのか、紙魚虫に聞いてみたい。


クリエイテブな蓑虫
きれいな糸や紙、紐、布、ボタン、リボンなどに心を惹かれるのはなぜだろう。
小さな切れ端でも捨てることができない。
私は小学生の時から人形作りやパッチワークなどを、自己流で楽しんできた。
18歳で上京したときに持ってきた布の箱は、引越しのたびに持ち運んでいる。
一般的にはごみというようだが、溜まる一方の宝物をときどき並べて、
にんまりしている私は、木の皮や葉で作った服を着ている蓑虫の化身かもしれない。

布といっても、私なりのこだわりがある。
イギリスのLiberty printに魅せられ、集め始めてから40年近くなるだろうか。
キルティングや洋裁が好きな人なら、誰でも知っているあの布だ。

ロマンチックな小花模様、ウイリアム・モリスのデザインによるアールヌーボーの図柄、
幾何学模様やコミカルな意匠などなどが、絹のような光沢のある木綿にプリントされている。
リバティー社が誇るこのような布をTANA LAWN(タナローン)というのは、
スーダンにあるタナ湖付近で採れる綿が超長綿で、
独特のしなやかさに富んでいることからこうよばれるようになったと聞いた。

タナローンを集め始めると、意外なところでも見つかるものだ。
教会のバザーやフリーマーケット、オークション、昔の洋装店や生地屋のデッドストック、
通信販売、ロンドンの本店などで、少しずつ買い求めたリバティーの布地が、大きなケース3個分になった。

さて、このリバティープリントで何を作ろうか。絵柄は色違いを含めると150種近い。
中には廃番になったパターンもあって、資料的に価値ある布も混じっている。
楽しく悩んだ末に頭に浮かんだのは、蓑虫の発想で作るロングスカートだった。
洋裁名人の友人と細かい打ち合わせをし、出来上がったのは、細く切ったピースを
100枚近く縦に接ぎ合わせたスカートで、我ながら大成功!!! 
まるでアートの世界だ。特にグラデーションが素晴らしく、見ていても見飽きることがない。

タナローンの特徴は皺になっても目立たないようにというコンセプトから、細かい模様の連続が多い。
くるくるとスカートを丸めると、小さくなって持ち運びに便利なので旅行に最適だ。
セーターに合わせればカジュアルに、上等のブラウスと組めばクラシックな雰囲気も楽しめる。
何より嬉しいのはこのスカートが会話の糸口になって、話の弾むこと弾むと・・・・・・。
それに絵柄には、ElysianやCristella, Poppy and daisy, Miranda, Floribunda, Edenham,
Hamlyn, Nancy Ann などのように必ず魅力的な名前がついている。
私はまだ60ぐらいしか覚えていないが、何よりも効果的なカンバゼーションピースといえよう。
とにかくこんなに嬉しいのだから、この際残りの布でスカートを作って、お福分けを・・・・・。

蓑虫が時間をかけてせっせと集めた布から、生まれたのは、以下の通り。
私に3枚(ピンクバージョン、ブルーバージョン、フルカラー), フルカラーで妹たちに4枚、
我が家のお嫁さんたちに3枚、親友に1枚、縫ってくれた友人に1枚、彼女のお嫁さんたちに2枚で、
合計14枚のスカートができた。
それぞれ、この世に泱しかないオリジナル・ワンである。

ラッピングをする前にカメラに収めたので、写真を見ていただきたい。
あまりにも素敵なので、正直のところプレゼントするのが惜しくなってしまった。
クリスマスの贈り物にと思っていたのだが、早くできたので妹たちには宅急便で、
お嫁さんたちには日曜日、夫の誕生祝いでファミリーが集まったときに手渡した。
今頃はみんな鏡の前で、ファッション・ショウを開いている頃だろう。












蓑虫の次のターゲット? もうすでに始めているので、そのうちに・・・・・・。









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